
建設業許可とは
「建設業」とは、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。建設業を営もうとする者は、建設業の許可を受けなければなりません。ただし「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する者は、必ずしも許可を受けなくてよいこととされています。
【軽微な建設工事】とは
| 「建築一式工事」の場合 | 工事一件の請負代金の額が1,500万円に満たない工事 又は 延べ面積が150㎡に満たない木造建築 |
| 「建築一式工事以外」の場合 | 工事一件の請負代金の額が500万円に満たない工事 |
許可区分
大臣許可と知事許可
取得する建設業許可が国土交通大臣許可となるか、都道府県知事許可になるかは、各事業者による営業所の配置状況によって決まります。
| 国土交通大臣許可 | 2以上の都道府県に営業所を設けて営業しようとする場合 |
| 都道府県知事許可 | 1つの都道府県にのみに営業所を設けて営業しようとする場合 |
【営業所】とは「本店」又は「支店」若しくは「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」をいいます。
一般建設業と特定建設業
建設業の許可は以下のように一般建設業と特定建設業に区分されています。
| 一般建設業 | 特定建設業の許可を受けようとする者以外が取得する許可 |
| 特定建設業 | 発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額が5,000万円以上※となる下請契約を締結して施工しようとする場合に必要となる許可 |
※特定建設業の金額要件は令和4年12月までは4,000万円、令和5年1月から令和7年1月までは4,500万円、令和7年2月以降は5,000万円と引き上げられています。
工事の種類
建設業の許可は、営もうとする建設工事の種類ごとに分けて行われる、いわゆる業種別の許可制度が設けられています。工事の業種は、平成28年6月に「解体工事業」が追加されて、29業種となっています。
工事の業種(29業種)
| 建設工事の種類 | 建設工事の内容 |
|---|---|
| 土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。) |
| 建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
| 大工工事 | 木材の加工又は取付により工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 |
| 左官工事 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 |
| とび・土工・コンクリート工事 | イ) 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立てを行う工事 ロ) くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事 ハ) 土砂等の掘削、盛上げ、、締固め等を行う工事 ニ) コンクリートにより工作物を築造する工事 ホ) その他基礎的ないしは準備的工事 |
| 石工事 | 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 |
| 屋根工事 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 |
| 電気工事 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 |
| 管工事 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 |
| タイル・れんが・ブロック工事 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 |
| 鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 |
| 鉄筋工事 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 |
| 舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 |
| しゅんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 |
| 板金工事 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 |
| ガラス工事 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 |
| 塗装工事 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 |
| 防水工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 |
| 内装仕上工事 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 |
| 機械器具設置工事 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 |
| 熱絶縁工事 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 |
| 電気通信工事 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事 |
| 造園工事 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 |
| さく井工事 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備等を行う工事 |
| 建具工事 | 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 |
| 水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 |
| 消防施設工事 | 火災警報設備、消化設備、避難設備若しくは消化活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 |
| 清掃施設工事 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 |
| 解体工事 | 工作物の解体を行う工事 |
許可要件
建設業の許可を受けるためには、「許可要件」を満たすこと及び「欠格要件」に該当しないことが必要です。
許可要件
- 一定の要件を満たす経営業務の管理責任者等を置くこと
- 健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入していること
- 営業所ごとに一定の要件を満たす専任の技術者を置くこと
- 役員・個人または支配人等が請負契約に関し不誠実な行為をする恐れがないこと
- 請負契約を履行するに足りる財産的基礎を有していること
欠格要件
- 許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合
- 建設業法第8条各号のいずれかに該当する場合
①経営業務の管理責任者がいること
適正な経営体制を有している会社であることを証明するために、建設業の経営業務を一定期間以上経験した人が最低1人いることが要件です。
- 許可を受けようとする建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること。
- 経営業務の執行に関して、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づき、執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験
- 6年以上経営業務を補佐した経験を有していること。
②営業所技術者を配置していること
営業所技術者の要件は一般建設業と特定建設業で異なり、以下のいずれかに該当していることが要件です。
<一般建設業の許可を受ける場合>
- 学歴+実務経験:建設業許可を申請する業種について、指定学科*修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者(ただし、短大、高等専門学校は大卒とみなすが、民間の専門学校は学歴として考慮しない)
- 実務経験:建設業許可を申請する業種について、10年以上の実務経験を有する者
- 国家資格者:建設業許可を申請する業種について、指定の資格を有する者
<特定建設業の許可を受ける場合>
- 国家資格者:建設業許可を申請する業種について、指定の資格*を有する者
- 指導監督的実務経験:一般建設業の許可を受ける場合の要件を満たしており、許可を申請する業種に関して、請負代金4,500万円以上である案件において2年以上指導監督的な立場の実務経験が有る者
- 大臣特別認定者:特別認定講習を受け効果評定に合格した者、もしくは国土交通大臣が定める考査に合格した者
③請負契約に関し不誠実な行為をする恐れがないこと
請負契約の締結・履行は誠実に行われる必要があります。そのため不正または不確実な行為をする恐れがある場合は、建設業を許可されません。
許可の対象が法人の場合は役員もしくは令3条使用人が、個人の場合は個人事業主または令3条使用人が審査されます。
④500万円以上の財産的基礎を有していること
建設業には機材購入や人員確保等にかかる費用が大きいという特徴があります。そのため、建設業に必要な一定の財産的基礎を有しているかどうかも、許可の要件です。
要件は一般建設業と特定建設業では異なります。
<一般建設業>
- 自己資本が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
<特定建設業>
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
許可の有効期間
許可の有効期間は、許可日から5年目を経過する日の前日をもって満了となります。なお、当該期間の末日が日曜等の休日であってもその日をもって満了します。引き続き建設業を営もうとする場合は、有効期間が満了する30日前までに更新の許可申請書を提出しなければなりません。
申請の区分
申請の区分
| 新規 | 現在有効な許可をどの許可行政庁からも受けていない者が、許可を申請する場合 |
| 許可換え新規 | 法第9条第1項各号のいずれかに該当することにより、現在有効な許可を受けている許可行政庁以外の許可行政庁に対し、新たに許可を申請する場合 |
| 般・特新規 | 一般建設業の許可のみを受けている者が新たに特定建設業の許可を申請する場合、又は特定建設業の許可のみを受けている者が新たに一般建設業の許可を申請する場合 |
| 業種追加 | 一般建設業の許可を受けている者が他の建設業について一般建設業の許可を申請する場合、又は特定建設業の許可を受けている者が他の建設業について特定建設業の許可を申請する場合 |
| 更新 | 既に受けている建設業の許可を、そのままの要件で続けて申請する場合 |
許可手数料等
申請の区分ごとに申請手数料が定められています。
| 知事許可 | 大臣許可 | |
|---|---|---|
| 新規 | 9万円 | 15万円 |
| 更新又は業種追加 | 5万円 | 5万円 |
行政書士に依頼するメリット
建設業許可申請を行政書士に依頼するメリットは、申請期間が短くなることです。会社の状況にあわせた書類を作成、準備してくれるので、何度も役所などに行く必要がないだけでなく、短期間で申請書類を提出できます。
また営業所技術者の変更時の変更届、毎年提出が必要な決算届、5年毎の更新手続きなども依頼可能です。建設業許可関連の手続きをすべて依頼しておけば、提出忘れで許可を取り消される心配もなく、安心して本業に専念できます。
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